インフルエンザワクチン
◎対象者:妊娠全期間の妊婦さん ◎接種回数:1回 ◎接種開始時期:毎年10月頃開始 ◎接種費用:4,000円 ◎効果:接種後2週間後から約5ヶ月
インフルエンザは、日本のように四季のある温帯地域では、通常冬季に流行します。症状としては、突然の高熱、頭痛、筋肉痛、関節痛が特徴的で、鼻水や咽頭痛、咳などの症状も1週間程度続きます。通常の風邪よりも全身倦怠感が強く、食欲が低下したり、腹痛や下痢といった腹部症状を伴うことがあります。妊婦さんが妊娠中にインフルエンザに感染すると症状が重篤になる場合があります。
インフルエンザワクチンは、ウイルスや細菌の病原性(毒性)を完全になくして、免疫を作るのに必要な成分だけを製剤にした不活化ワクチンという種類ですので、妊娠中でも接種が可能です。母体及び胎児への危険性は、妊娠全期間を通じて極めて低いと言われています。また、生後6ヶ月未満の乳児にはインフルエンザワクチンの接種は認められていないため、妊婦さんが接種することで、へその緒を通じて赤ちゃんにも妊婦さんの体内で生産されたインフルエンザウイルスに対する抗体が移行することから、出生児への予防効果が期待できます。当院では、防腐剤を使用していないワクチンを採用しており、通院中の妊婦さんの接種分のみ確保しております。接種を希望される方は、お早めにスタッフにお申し出下さい。 ※ワクチン成分に対する重度のアレルギー反応の既往を有する方などは接種を受けられません。
RSウイルスワクチン
◎対象者:妊娠24~36週の妊婦さん ◎接種回数:1回 ◎接種費用:30,000円 ◎効果:接種後2週間後から約5ヶ月
RSウイルス感染症は、2歳になるまでにほとんどの乳幼児が感染します。通常は、RSウイルス感染症は大人と同様で、多くは軽症ですみますが、初感染乳幼児の場合、約20〜30%で気管支炎や肺炎などの下気道症状が出現することがあります。重症化に対して特に注意が必要な乳幼児は、基礎疾患を有する小児(特に早産児や生後24か月以下で心臓や肺に基礎疾患がある小児、神経・筋疾患やあるいは免疫不全の基礎疾患を有する小児等)や6ヶ月未満の乳児です。
RSウイルスワクチンは、妊娠24~36週の妊婦さんに1回接種することで、へその緒を通じてお腹の中の赤ちゃんにも妊婦さんの体内で生産されたRSウイルスに対する抗体が移行することから、新生児及び乳児におけるRSウイルスを原因とする下気道疾患を予防する効果が期待できます。接種を希望される方やより詳しいお話をお聞きになられたい方は、医師またはスタッフにお申し出下さい。
子宮頸がん(HPV・ヒトパピローマウイルス)ワクチン
当院では、新型コロナウイルスの感染状況を鑑み、現在も子宮頸がんワクチンの取り扱いを中止しております。今後、当院でも体制を整え次第、子宮頸がんワクチンの接種を再開する予定です。
子宮頸がんは、子宮の入り口にあたる「子宮の頸部」にできるがんのことです。早期に発見すれば比較的治療しやすく予後の良いがんですが、進行するとリンパ節や他の臓器に転移したりして、治療が難しくなることから、早期発見・予防が極めて重要となります。子宮頸がんの発生には、その多くにヒトパピローマウイルスの感染が関与しています。また、ヒトパピローマウイルスは性交渉で感染することが知られています。多くの場合、感染しても免疫の働きによって排除されますが、一部の人で子宮頸がんに移行してしまうことがあります。
子宮頸がんワクチンは、子宮頸がんの発生と関連が深い一部の型のヒトパピローマウイルスの感染を予防するものであり、子宮頸がんを予防する上で大変有効です。但し、ワクチン接種によって子宮頸がんを完全に予防できるものではありませんので、禁煙や節度のある飲酒、運動を含む適度な身体活動に加え、バランスの良い食事を取るなど、がんを予防するような生活を送るとともに、20歳になったら、定期的に、子宮頸がん検診を受けることが重要です。
定期接種できる子宮頸がんワクチンの種類・一般的な接種スケジュールと回数
現在、我が国で定期接種として公費で接種できるのは、小学校6年~高校1年相当の女子を対象に、以下の3種類のワクチンです。ヒトパピローマウイルスには複数の型があり、その内、子宮頸がんの発生と関連が深い一部の型のヒトパピローマウイルスの感染を予防するものになります。病院や診療所の医師と相談し、いずれかの1種類を接種します。ワクチンの種類や接種する年齢によって、接種の回数や間隔が少し異なりますが、いずれのワクチンも、半年~1年の間に決められた回数を接種します。
- 【サーバリックス(2価ワクチン)】
- HPV16型と18型の2つの型に対して感染予防効果を持つものです。
- 【ガーダシル(4価ワクチン)】
- HPV16型と18型の2つの型に加え、尖圭コンジローマの原因となる6型と11型の2つの型、合計4つの型に対して感染の予防効果を持つものです。
- 【シルガード9(9価ワクチン)】
- 子宮頸がんの原因の80~90%を占める、7種類のHPV16型、18型、31型、33型、45型、52型、58型と尖圭コンジローマの原因となる6型と11型の2つの型、合計9つの型に対して感染の予防効果を持つものです。
※サーバリックスまたはガーダシルを規定の回数接種した後にシルガード9を追加接種することについては、世界保健機関(WHO)や米国疾病予防管理センター(CDC)は推奨していません。これは、サーバリックスまたはガーダシルでも、子宮頸がんに最も関与の強い型であるHPV16型と18型(※)の感染予防に効果があることや、異なる種類のワクチンを接種した場合の有効性と安全性についての科学的知見が限られていることからです。但し、接種回数が規定回数に満たない方は、医師と相談のうえ、途中から9価ワクチンに変更し、残りの接種を完了することが可能となっているようです。この場合にも公費で接種することがきますが、前述のように効果やリスクについての科学的な知見は限られているようです。 (※)HPV16/18型が子宮頸がんの原因の50~70%を占めます。
キャッチアップ接種の制度について
平成9年度生まれ~平成19年度生まれ(誕生日が1997年4月2日~2008年4月1日)の女性の中に、小学校6年から高校1年の頃に、国の方針として積極的勧奨が控えられていたことから接種の機会を逃した方がいらっしゃいます。まだ接種を受けられていない方に、あらためて子宮頸がんワクチンの接種を公費で受けられる機会が提供されています。キャッチアップ接種の制度は、2025年(令和7)年3月31日で終了します。自費での接種は高額となるため、お住まいの自治体に問い合わせるなどして当該制度の期限内に接種されることをお勧め致します。